紙は「ただの紙」じゃなかった
昔の私は、紙なんてどれも同じだと思っていました。
ノートにメモをとる、プリントを印刷する。
そんな“目的を果たすためのもの”という認識しかなかったのです。
けれど、文房具に魅了されてから、紙の世界がガラリと変わりました。
ざらざら、つるつる、さらさら。紙には肌触りの違いがあり、それぞれが持つ音や質感もまったく異なります。
書くことが好きになると、紙にまで興味がわいてくる。
その奥深さに気づいた今では、紙と向き合う時間がとても楽しいのです。
音でわかる、紙の個性
たとえば、シャープペンシルで書いたノートをめくるとき。
凹凸のある紙がカサカサッと軽い音を立てます。
この音が、なんとも心地よい。
万年筆でインクをしっかり吸い込んだ紙は、また違う音を奏でます。
少ししっとりとした重みがあって、紙の奥までインクが染み込んでいるような、静かでやさしい音。
音には、その紙の質感が宿っています。
一見同じように見える白い紙でも、めくる音やペン先の走る音はまったく違うんです。
書き心地でわかる、紙の表情
ざらざらした紙は、鉛筆や万年筆のペン先に少し引っかかる感じがあって、「書いてるぞ」という実感が指先に伝わってきます。
その感覚が好きです。
ツルツルの紙はとにかく滑らか。
ペン先がスーッと走っていくので、ジェルインクや油性ボールペンと相性が抜群。
摩擦が少ないから、流れるように文字を書けます。
さらさらの紙は、その中間。
やわらかく、ほどよく滑らかで、ほどよくざらっと。
書くリズムに心地よいテンポが生まれます。
そして紙が変われば、インクの発色も変わります。
同じインクでも、紙の吸収性や表面の加工によって、見え方がガラリと変わってくるのです。
高級紙も安価な紙も、それぞれに魅力
たしかに、高級な紙は手触りも筆記感も素晴らしい。
万年筆インクが美しく発色し、書いた文字が生き生きとして見えます。
ちょっと背筋が伸びるような、特別な書き心地です。
でも、私は安価な紙も大好きです。
書いたあとの紙が、くたっと波打っていたり、インクがほんの少しにじんでいたり。
そういう「疲れた紙」には、日常の温度や生活感がにじんでいて、なんとも言えない味わいがあります。
何気なく書いた1ページが、紙の質によって記憶に残る──そんな体験もあるのです。
紙は、五感で楽しむもの
「ただの紙」だったはずの存在が、今では五感で楽しめるものになりました。
目で見て、手で触れて、耳で音を聴き、時にはインクの匂いを感じる。
書く時間そのものが、感覚を研ぎ澄ませるひとときになるのです。
これからも、いろんな紙に出会っていきたいと思います。
高級なものも、手軽なものも、それぞれが違った魅力を持っているから。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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